地方銀行の仕事を考える

悩める地方銀行員のつぶやき

地方と都会の違い。

前回、中小企業との取引について書いたが、地方銀行の収益の核となる部分は中小企業

との取引から生み出されている。企業への事業資金融資や従業員への住宅ローン融資か

ら得られる利息収入、為替取引から得られる手数料収入、最近ではオーナーの相続対策

や事業承継対策を支援することから得られるコンサルティング収入なども注目されてい

る。地元である地域の営業店に所属する銀行員にとっては、法人(大部分が中小企業)

営業担当はいわば花形であり、法人取引は非常に重視されていることから、エース級が

配置されることとなる。オーナー社長や経理部長との良好な関係を築き、競合他社より

有用な情報を、より早く提供し、せっかちな社長が納得するスピード感を持って様々な

提案を繰り返しぶつけていく。これが中小オーナー企業との取引を拡大するための鉄則

であり、これができないと都銀や他の地銀、信用金庫に負けてしまう。逆にこれができ

ていれば、勝ち続けることができる。

 

一方で、東京や大阪など都会にある営業店においては、営業スタイルが異なる、という

よりも、同じような営業スタイルは取り得ない。なぜか。

 

それは、「社長に会えない」からである。

 

以前に書いたように、地方銀行は特定の地域を本拠地としている。都会の支店は規模は

大きいがあくまで出先に過ぎず、地元のように地域の中小企業とはあまり取引をしな

い。上場企業を中心とした大企業との取引が中心であり、そのために都会に拠点を置い

ているのである(実際にはそれだけが目的ではないが、詳細はまた別途書く)。

大企業の社長は、銀行員とは会わない。メガバンクの頭取が表敬訪問で行けば会うのか

もしれないが、少なくとも地方銀行の一担当者とは会わない。頭取が行くと言っても会

わない企業もざらである。そもそも大企業は組織が細分化されており、社長は銀行取引

を管轄しておらず、別途財務担当の役員、部長、課長、担当者がいるのである。銀行の

担当者が行けば担当者が出てくるし、課長が行けば課長クラスが出てくるし、部長が行

けば部長が出てくるし、役員が行けば財務担当役員が出てくる、といった感じで厳格に

階層分けがされている。それがマナーのようなものでもあって、もし銀行の担当者が財

務担当役員にアポを取ろうとすれば、それは失礼とみなされ、もちろん会ってくれな

い。当然社長には会えない。

つまり、銀行の担当者は、取引先の担当者に対して提案するしかないのである。取引先 

の担当者は、ただのサラリーマンであり権限はほとんどない。その担当者とどんなに仲

良くなってもその上司たちが通してくれなければ、提案は空振りとなる。最終決裁者が

財務部長なのか役員なのかは会社により異なるが、少なくとも普段から会っている相手

が最終決裁者であるということはあり得ない。これが、地方銀行において、都会と地方

の営業の仕方が全く異なることとなってしまう大きな理由である。

地方から都会に転勤してきた者にとって、これは非常にギャップを感じるところなので

ある。人によっては。慣れるまでにはかなりの時間を要する。