地方銀行の仕事を考える

悩める地方銀行員のつぶやき

地銀が東京に拠点を置く理由。

なぜ、地方銀行は東京に拠点を置くのか。

まず一つ目の理由は、地元の産業が衰退しつつあり新規の融資等で稼げないため、資金

需要の旺盛な都会で収益を上げよう、という発想に基づくもの。もちろん、地方にも名

門企業と言われるような優良な大企業は存在するが、全体として見ると、地域経済は伸

びているとは言えず、今後有望と思われる産業もあまりない。一方で、東京は上場企業

を中心とした大企業がひしめき合い、新たな産業もどんどん生まれている。設備投資す

るにしても、大企業は数百億、数千億といった投資をするため、資金需要は大きい。も

ちろん、信用力の高い大企業は借入の利率も中小企業よりかなり低いがロットが違う。

 

仮に、50億円を0.3%で貸した場合、年間の利息収入は15百万円である。中小企業に対

し、1億円を2.0%で貸した場合の年間の利息収入は2百万円であり、差は歴然である。

 

地方の中小企業にとって1億円というのは非常に大きい金額である。ちなみに、2.0%と

例をあげたが、今、中小企業に対しても2.0%で貸付ができることはまずない。日銀の

マイナス金利政策の影響は大きく、中小企業でも財務体質が健全な企業は都会の大企業

と遜色ない条件で借入をしている。上の例で、中小企業に対し、0.5%で貸した場合、

1億円×0.5%=50万円 これではもうからない。ただ、これが現実である。

住宅ローンも同じく、0.5%を下回る銀行もあり、本当に利益が出しにくくなっている。

これをカバーするために、東京で大口の融資案件を獲得しようとするのである。

 

京進出のもう一つの理由は、情報を取るためである。日本における金融の中心は紛れ

もなく東京である。最新の金融情勢や景気の変動を敏感に掴み取るには、東京に拠点を

置く必要がある。情報という意味では、新しい産業は東京で生まれるため、その情報を

いち早く取得できるというメリットもある。

 

まとめてみると、地銀が東京に進出する理由は①地方で取れない収益を稼ぎ出すため

②金融の中心であり流行の最先端にある東京の情報を得るため

大きくはこの二点があげられる。非常に重要なミッションであるため、東京の拠点には

地方で大きな成績を残した選りすぐりの行員が集められるのである。

地方と都会の違い。

前回、中小企業との取引について書いたが、地方銀行の収益の核となる部分は中小企業

との取引から生み出されている。企業への事業資金融資や従業員への住宅ローン融資か

ら得られる利息収入、為替取引から得られる手数料収入、最近ではオーナーの相続対策

や事業承継対策を支援することから得られるコンサルティング収入なども注目されてい

る。地元である地域の営業店に所属する銀行員にとっては、法人(大部分が中小企業)

営業担当はいわば花形であり、法人取引は非常に重視されていることから、エース級が

配置されることとなる。オーナー社長や経理部長との良好な関係を築き、競合他社より

有用な情報を、より早く提供し、せっかちな社長が納得するスピード感を持って様々な

提案を繰り返しぶつけていく。これが中小オーナー企業との取引を拡大するための鉄則

であり、これができないと都銀や他の地銀、信用金庫に負けてしまう。逆にこれができ

ていれば、勝ち続けることができる。

 

一方で、東京や大阪など都会にある営業店においては、営業スタイルが異なる、という

よりも、同じような営業スタイルは取り得ない。なぜか。

 

それは、「社長に会えない」からである。

 

以前に書いたように、地方銀行は特定の地域を本拠地としている。都会の支店は規模は

大きいがあくまで出先に過ぎず、地元のように地域の中小企業とはあまり取引をしな

い。上場企業を中心とした大企業との取引が中心であり、そのために都会に拠点を置い

ているのである(実際にはそれだけが目的ではないが、詳細はまた別途書く)。

大企業の社長は、銀行員とは会わない。メガバンクの頭取が表敬訪問で行けば会うのか

もしれないが、少なくとも地方銀行の一担当者とは会わない。頭取が行くと言っても会

わない企業もざらである。そもそも大企業は組織が細分化されており、社長は銀行取引

を管轄しておらず、別途財務担当の役員、部長、課長、担当者がいるのである。銀行の

担当者が行けば担当者が出てくるし、課長が行けば課長クラスが出てくるし、部長が行

けば部長が出てくるし、役員が行けば財務担当役員が出てくる、といった感じで厳格に

階層分けがされている。それがマナーのようなものでもあって、もし銀行の担当者が財

務担当役員にアポを取ろうとすれば、それは失礼とみなされ、もちろん会ってくれな

い。当然社長には会えない。

つまり、銀行の担当者は、取引先の担当者に対して提案するしかないのである。取引先 

の担当者は、ただのサラリーマンであり権限はほとんどない。その担当者とどんなに仲

良くなってもその上司たちが通してくれなければ、提案は空振りとなる。最終決裁者が

財務部長なのか役員なのかは会社により異なるが、少なくとも普段から会っている相手

が最終決裁者であるということはあり得ない。これが、地方銀行において、都会と地方

の営業の仕方が全く異なることとなってしまう大きな理由である。

地方から都会に転勤してきた者にとって、これは非常にギャップを感じるところなので

ある。人によっては。慣れるまでにはかなりの時間を要する。

地域を支えるために。

前回、地方銀行の仕事は地域を金融面から支えることだと書いた。

では、地方銀行の行員は、地域を支えるために具体的に何をしているのか。

銀行員も、営業人員と事務人員がいる。最近は事務人員はパート社員と派遣社員

とがほとんどで、銀行の正社員が事務を専門的に担うことは、管理者(責任者)を除い

てはあまりない。正社員は基本的に、顧客折衝業務を担っている。銀行では、顧客折衝

のことを渉外活動といい、渉外活動を行う人員のことを渉外担当者、または単に渉外、

と呼ぶ。今、銀行に入り、営業店(本店や支店、つまり現場。本部ではないところ)に

配属されると、渉外担当者として配置されるのが基本である。

話は戻り、地方銀行の行員は何をしているのか。渉外活動をしているのである。

その相手は誰か。企業(会社や個人事業主)やサラリーマン、資産家等々である。

営業活動の内容は何か(何を売っているのか)。企業への事業資金融資、サラリーマン

への住宅ローンや教育ローン、資産家への資産運用商品紹介など。

中でも、地方銀行の営業活動を大きく特徴づけているのが、中小企業との取引である。

中小企業とは、その名の通り規模の小さい企業のことであるが、定義上は、「中小企業

基本法」に定められており、業種と資本金の額、従業員の数により分類、決定される。

中小企業とは、完全にイコールではないが、オーナー企業がほとんど。「中小オー

ナー企業」という使い方もするなど、中小企業=オーナー企業と考えてほぼ差支えな

い。その中小オーナー企業との取引を推進するのが渉外担当者の役割である。

中小企業オーナーの方々というのは、非常に個性的であり、好き嫌いがはっきりして

いる。いわゆるワンマン経営は全く珍しくない。つまり、筆頭株主であり、会社の方向

性を決定するのがオーナー社長である以上、どの銀行と付き合うか、という問題も

社長が決めること。つまり、会社組織において絶大な決定権を持つオー

ナー社長の信頼を得られれば、数々の金融機関の中から選んでもらうことができる。

例えば、複数の銀行から融資提案を受けていたが、A銀行から借入をしたとする。

「なぜA銀行から借りたのですか」「A銀行が(担当者が)好きだから」

こんな感じである。オーナー社長の心を掴むことができれば、競合他社に打ち勝つこと

ができるのである。

地方銀行の仕事とは。

地方銀行の仕事とは何か。

そもそも地方銀行(地銀)とはどんな組織か。

正式な定義としては「全国地方銀行協会(地銀協)」に加盟している銀行と

いうことであるが、実態としては、その名の通り、一定の地域を拠点、中心として

営業活動する銀行のことである。都会である東京に本店があっても、一定の地域で

活動していれば地方銀行である(きらぼし銀行など)。

対比として、全国規模で営業をしているのが都市銀行(都銀)。今では合併により

巨大化したことからメガバンクと呼ばれるみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行

の三行にりそな銀行を加えた四行がいわゆる都市銀行である。

 

次に、銀行の仕事とはどういうものか。

銀行の仕事の中心は、「預金」「融資」「為替」、この三つがが三大業務と

言われている。現在は業務内容が非常に幅広くなっているが、「銀行法」に

定められた業務に限り行うことができるとされている。

 

つまり地方銀行の仕事とは、上記の銀行業務を一定の地域を拠点として展開すること。

地域を拠点にするということは、その地域の経済状況の影響を大きく受けると同時に、

その地域の経済を金融面から支える義務がある、ということ。

地域には様々な企業があり、それぞれがサービス面や、雇用の面などで地域に貢献して

いるが、地方銀行は金融面で地域に貢献する。これが地方銀行の使命であり、都市銀行

とは決定的に異なる点である。

ブログ始めます。悩める地方銀行マンのつぶやき。

私は、とある地方銀行に勤めています。

現在、東京に単身赴任しています。

東京に行けば、でっかい仕事と華やかな生活が待っている!

と思っていたのですが、現実はそうはいきません。

地方での仕事とのギャップに悩み、苦しみ、辛い気持ちになることばかり。

そんな中でも、希望を捨てずに頑張っていこう!という思いと、自分の気持ちを

整理するために、このブログを始めました。

日々の仕事で思ったことなどを綴っていこうと思います。